公開日 : 2018/06/05 | 更新日 : 2018/10/02

印刷博物館

ぐるっとパス 2018 施設番号 22  印刷博物館。

ぐるっとパスをつかっての記念館巡りは6月1日までかなと思っていたのですが、思いのほか時間の都合がついたので、できれば行ってみたいと思っていた文京区の「印刷博物館」に行くことにしました。

こちらの博物館は、特定のどなたかの名称がついた個人記念館ではないのですが、凸版印刷が創立100周年記念事業の一環で設立した、印刷関連に特化した展示博物館となっています。

今回、印刷博物館には電車で、最寄りの江戸川橋駅から歩いて行ったのですが、

駅の出口、わかりやすかった!

途中、印刷関連会社だらけで、

昔のタイプライターが道沿いに展示されていたり。

しかもレトロな佇まいの会社もあり、

行くまでがすでに印刷博物館!という感じでした。

さらに、道路の反対側、博物館の目の前には、取次大手のトーハンが。

まさに、印刷博物館にふさわしい立地でした。

印刷博物館は、凸版印刷の本社の中にあります。

博物館に着いたのが11時頃だったので、まずはお昼ごはんと思い、受付の方に聞いてみると、上の階に食事処があることが判明。

行ってみると、なんと、二ヶ所ありました。
普段は個人記念館に行っていたので、さすが大手資本!!と変なところで感心してしまいました。

迷った末、意識高い感じのレストランへ。
(もう一つの方が意識低いというわけでは決してないです💦)

飲み放題の健康茶や、身体にとても良さそうなメニュー。
リーズナブルな値段に、気分があがりました。

中に入ると、社員証を首からかけている方がほとんどだったので、基本は社員食堂なんですね。

印刷博物館を常時一般公開している点といい、こういう施設がある点といい、「やるからにはいいものを提供しよう」という心意気が感じられ、なんだか凸版印刷の印象が、ぐっと上がりました。

さて、肝心の印刷博物館。

中では、一般展示の他に企画展も行なわれていました。

写真を撮ったつもりが撮れていなかったのですが、「進化するデジタル印刷―オンデマンド出版からバリアブル印刷まで―」という企画で、様々なデジタル印刷技術の商品が展示公開されていました。

私も、父の本をオンデマンド出版でも販売しているので(→ 『ソニー技術の秘密』販売サイト)、とても興味深い展示でした。

当たり前というか、やっぱりというか、私がやろうとしていること(つまり、オンデマンドによる絶版本の復刊ですね)はみなさん考えていて、様々な方法で提供されつつあるので、ちょっとほっとしました。

名著や古書の絶版がなくなることが大事なのであって、そういう輪が広がっていくといいなと思っています。

印刷博物館の常設展示は、地下にあります。

エスカレータを降りてすぐ、受付があり、パスを提示してさあ入館!…しようと思ったら、受付に「印刷の家「知る」コース 13:30-開催 先着10名」との文字が。

内容を伺うと、博物館一番奥の「印刷の家」で、専門家が印刷のことを解説してくださるとのこと。
それは是非申し込みたい。

その時、時間は13:15。

先着たったの10名だから、もう無理かもと思いながら、展示物を見たい気持ちを我慢しながら通り過ぎて受付しました。
幸い、誰も来ていなくて、無事申し込むことができました。

時間までの短い間、見られなかった内部をあらためて少し見て回りました。

例によって、内部の撮影はダメだったので、頑張って言葉で表現しますと、内部はとても広く、国立の博物館なのでは?っていうくらい重厚で丁寧に作り込まれています。

入口すぐには、印刷の歴史のミニチュア展示があり、徐々に活版技術が進化してゆく様子がわかり、最後にはappleのパソコンが埋め込まれているなど、遊び心があります。

そのコーナーを過ぎると、別の扉があり、その中では、様々な印刷にまつわる展示がなされていました。
ひとつひとつに、丁寧な映像解説がついています。

いつもながらに、博物館の規模をかなり甘くみていたので、時間配分がまったくできず、泣く泣くほとんど素通りとなりました。

13:30に「印刷の家」に戻ると、職人さんが仕事の手を止めて、解説にきてくださいました。

解説の中身としては、「印刷の家」の中に保管されている活字棚や1800年代に作られた印刷機の使い方などから、印刷の歴史を解説してくださいました。

活字棚の存在は、文選と植工に興味があって、いろいろ調べたことがあったので写真でも見たことがあり、よく知っていたのですが、実物は初めて見ました。

まさか、実物が保存されているとは。
すごいことです。
知ると見るでは大違い。
活字の多さ、小ささにびっくりしました。

活字棚と活字がそのまま保存されているから気づけるのですが、活字は単なるあいうえお順、画数順ではありません。
手前からよく使う順にならんでいるのです。
そりゃあそうだよなぁとは思いつつ、職人さんの使い勝手を生で見ることができてとても面白かったです。

実際に文選・植工の技術発展は、大量印刷が開始されてから数十年間くらいだったのかもしれませんが、ここまで極まっていた職人文化が全く廃れてしまったのは、仕方がないとはいえ、、、まあ、やっぱり仕方がないとしかいいようがないですね。
貸本屋と一緒で、文化が変わってしまったのはどうしようもない。
個人的にいくら魅力を感じても、廃れるしかない。はがゆい。

銭湯の三助だって、水中バレエの踊り子だって、談話室滝沢のウェイトレスだって、秘宝館だって、宝塚ファミリーランドだって、遊郭だって、デパートのエレベーターガールだって、技術も体系も極まっていたのに…客が求めていなければ、やる人もいなくなれば、廃れるしかない。仕方がない。

仕方がないのだろうか…。うーん。

時代から取り残されたもの、取り残された職人文化、取り残された遊園地などが廃れて消えていくのが昔から本当に嫌で、なんとかならないものかと思い悩み、せめてもと遊園地巡りや銭湯巡りなどしていたのですが…もう、廃れていくのは仕方がないとしか表現のしようがないです。

後世につなげる方法としては、たった1軒だけでも継承を絶やさずに残していたおかげで復活できた「碁石茶」のように、また、今では日本文化の代表格のような存在の歌舞伎も茶道もかなり際どいところをほそぼそと続けていた時代があったわけで、その位置をねらうか、この活字棚のように綺麗な遺し方をしてもらうか、ですね。

「印刷の家」では、定期的に文選・植工・刷りの体験も行っているので、本来だったら全く廃れたであろう活字技術に対しての、理想的な次世代への伝え方だなと感心してしまいました。

鉄道博物館などもそうで、蒸気機関車や寝台列車、食堂車など、今では使われることのない車両を、列車に合った最善の方法で保存公開しています。

そういう意味では個人記念館も商業博物館も茶道や歌舞伎などの文化遺産も同じで、愛ある保存継承、大事ですね。

一歩間違うと、偽物のうわべだけの保存、今風に安直に改変した保存になって、それで後世に伝えるでよし!となってしまいがちです。

その方がメンテナンスが簡単だったりしますから。

でも、愛ある保存継承を、と考えると、場所もとられるし、面倒くさいこともあるし、人からの支持が得られなくなる時期があるかもしれない。

そこで、やめるか、のこすか。

あとはのこすと決めた人達の「愛」「情熱」次第なんだろうな、と思います。

そういう意味でいくと、100周年記念だったとはいえ、凸版印刷の記念館事業に携わった方々の、印刷への思い入れ、愛は半端じゃないなと感じました。

一見、一般向けに作りつつ、それだけではないぞ、という感じ。

私が特に興味をひかれたのは、昔の印刷技術のコーナー。
雑誌を作る工程をミニチュアと映像で知ることができるのですが、まあ、その行程の大変なこと!
確か、戦前と戦後の2パターンの印刷室が見られたと思うのですが、どちらも、作業部屋が複数あり、現像室、色味をチェックする部屋、塗って本来の色に近づける人が常駐する部屋など、数十年前には一冊の雑誌を作るのに、本当に大勢の職人達と大きな専用の機材がなければ作り上げられない世界だったんだなぁ、と一番痛感できるコーナーでした。

この職人技術も、DTPが駆逐して、もう一掃されてしまいましたよね。

単に出来上がった版画や活版印刷の本、貴重な資料といった表面的なものを展示するだけではなく、活字棚も含めた、そういった裏方の、消えていった印刷の職人技そのものまでをも遺しておこうとするコーナーがあったのが、個人的に嬉しく思いました。

愛ですね、愛。

今回の博物館は、今まで行ってきたような個人記念館ではないのですが、業界全体を遺すような、こういう遺し方をしないと遺しておけない技術、世界があるのだと知りました。

例えば日本一の活字職人さんがいて、その方の功績をたたえて個人記念館を作ったとしても、こういった遺し方はできないですからね。

ソニーがテープレコーダーやトランジスタの制作体験工房を作るようなものかな?
ちょっと違うか笑

この博物館は、一企業が記念事業として、集めてきた資料を企業内で保存しながら一般公開展示というパターンですね。

単なる企業の自社製品ショールームではなく、やるからには印刷業界全体、廃れた技術を含めた印刷の歴史全体を展示してしまおうというスケールの大きさが、凸版印刷って、すごいなと思いました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ぐるっとパス:企画展 一般300円 → 無料!

現在累積額:4500円(2300円の得!)

公式サイト → http://www.printing-museum.org/