インタビュー公開日:2020/02/22 | 更新日:2020/03/04

たばこと塩の博物館

  • 施設の正式名称 : たばこと塩の博物館
  • 愛称 : たばしお
  • 施設の住所 : 日本, 東京都墨田区横川1-16-3
  • 施設の連絡先 : 03-3622-8801(代表)
  • 施設の形 : 企業博物館
  • 所有者 : JT
  • 運営母体 : 公益財団法人 たばこ総合研究センター
  • 運営母体の連絡先 : 03-6284-1515
  • 料金体系 : 有料
  • イヤホンガイド :
  • 予約の必要 : 無(団体の場合は有)

※ 掲載当時と情報が異なっている場合がありますので、開館時間、休館日、イベント等、正確な最新情報は公式URLをご覧ください

この施設の設立趣旨

「単に収集した資料を展示するにとどまらず、日本専売公社(設立当時)が扱う専売品であったたばこと塩に関する文化史・産業史などの調査研究や資料収集を行い、系統的にたばこと塩の正しい情報を伝え、たばこ産業・塩産業の理解と周知をはかる」
(常設展示解説ガイドブックより)


以下、interviewee:千々岩様(たばこと塩の博物館 館長)・袰地様(同館 広報担当主任)、interviewer:木原(フィールドアーカイヴ 代表)

質問1:この記念館ができたきっかけ、なぜここに建てられたのかを教えてください


広報:当館は現在JTの博物館ですが、渋谷に館をつくった時は日本専売公社だったんですね。

そのさらに前身の専売局というところが、だんだん日本の喫煙文化がきせるから紙巻きたばこに変わっていき、江戸時代以降続いてきた日本のたばこ文化が失われていくということで、1930年代頃からきせるが描かれている浮世絵であるとか、喫煙具そのものであるとかを蒐集しはじめたのがきっかけです。

当時、大蔵省専売局長官だった佐々木謙一郎氏が集めようと声をかけた頃というのは、不景気だったこともあり、公家や大名家などの中には没落するところも出てきて、自分たちが持っている銘品を売り出してしまっていた時期で、それが海外に流出してしまうということもありました。それらの品々の中から目利きの人達が購入、蒐集して当館の基本の資料は成り立っているので、結構な銘品があるのです。

資料は公社に関係した催しなどで公開されてきたものの、次第に常時一般に公開できるようにしたらどうかという声が公社内外から高まってきて、1974年(昭和49)たばこ製造専売70周年記念行事の一つとして博物館の設立が決定されました。

そして1978年(昭和53)11月に渋谷・公園通りに「たばこと塩の博物館」が開館しました。元は日本専売公社の社宅があった場所です。

館長:渋谷の博物館は耐震性や老朽化の問題とか、さらに収蔵品がどんどん多くなってきて手狭になってきたという問題もあって、2015年に墨田区横川に移転、リニューアルオープンしました。

この場所ももともとJTが持っていた倉庫で、隣が工場だったんです。今も施設はあるのですが、工場関係の倉庫だったところをリニューアルしました。

質問2:常設展示に際し、他の記念館にはないユニークな品や見せ方などは何ですか

まずユニークなのは、ここは「たばこ」だけでなく「塩」の博物館でもありますね。


館長:専売は1900年代の頭ぐらいに「たばこ」と「塩」と「樟脳(しょうのう)」の3つで立ち上がりました。

樟脳は昭和30年代で専売制は終りまして、化学製品に変わっていきました。塩についてはずっとやっていて、JTになってからもやっていましたが、1997年に塩の専売制がなくなり自由化になったんです。

ではなぜそういうものを専売制にしたのかっていうような歴史も実はそれなりにあるんですけれども。

それは先日、じっくり館内を見学して読ませていただき、よくわかりました。
たばこはいまも専売ですか?


館長:たばこはJTになった1985年に自由化されました。

ではJT以外でもたばこは作れる?


館長:そういう意味では半分、特別な法律がございまして、製造はJTだけなんです。国内で作れるのは。でも販売は自由なんです。

ですから海外から輸入して好きなものを売ってかまわないわけです。昔は海外のたばこも日本のたばこも専売公社を通して売っていました。

「たばこ」は勝手にJT独占というイメージがついていて、逆に「塩」はまったくJTのイメージがないので不思議でした。専売つながりだったんですね。


館長:よく聞かれます。塩も昔は専売だったんですか、と。
昔、「三公社五現業」(→ Wikipedia)があり、官業、国が行う事業、のような形でした。

広報:いまの中学生高校生、大学生でもあやしいのですが「専売」ということがもう言葉としてピンとこない世代がけっこう多くなってきていて、以前だと「たばこと塩、なんでですか」と聞かれて「専売だったからです」となったんですが、もうそういう感じの会話は成り立たなくなったので、「専売とはなんぞや」という話からしなければならなくなってきました。

当館は、当館の成り立ちをご説明すること自体がなかなか、細かく入っていくと難しいですね。

館長:ですから歴史的なこともあるんですけれども、結果的に「たばこ」に関係する博物館っていうのはここしかないんです。「塩」は地方にも若干、塩関係の資料館みたいなものはありますが、当館が最も「塩」に関しても大規模に扱っている博物館でしょう。

ほぼ実物大の宗教的なレリーフや像などの複製展示物が飾ってあって、驚きました。


館長:例えば塩のキンガ像。これは、ポーランドのヴィエリチカ岩塩坑という非常に世界的に有名な場所で、岩塩の中をくりぬいた坑道の中に彫刻がされているのですが、当館が墨田に移るにあたってスペースもできた、天井も高いということで、この像をモチーフに、特別に許可をもらって現地の岩塩で制作しました。博物館に岩塩彫刻があるのは世界でも珍しいでしょう。

広報:塩を掘り出すというのは非常に危険な作業なので、現地ではキンガ像は信仰の対象になっています。今回、当館のオープンにあたって、実際にヴィエリチカ岩塩坑の坑夫さんかつアーティストの方に現地で、現地の塩を使って彫ってもらって、それを船便で持ってきたものなんです。全部塩、岩塩です。この像もヴィエリチカの岩塩ですし、この背景とかアーチとか床も全部岩塩です。

しかもキンガ像は2メートルくらいありますが、パーツごとに作って後でくっつけたのではなくて、一つの岩塩の塊から彫り出しています。

質問3:開館当初の見せ方から変化した部分はありますか、もしあればなぜ変化させましたか


館長:当館は移転前の館内に比べて面積的に1.5倍から2倍くらいに広がり、その際に昔からの展示プラスアルファ、中身を全部もう一度再検討しなおした中で、新しい展示資料を含めていま常設展を開設しています。

広報:塩に関して渋谷時代の展示は、もうちょっとダイレクトにいきなり「世界の塩」そして「日本での塩づくり」だったんですけれども、人間、動物にとっても塩は絶対に必要なんだっていうことをやっぱり博物館として伝えなければならないっていうところで、導入部分で、進化の中で動物は体の中に海を作ったんだっていうことをお伝えするために展示を再検討しました。

当館の建物は倉庫をリニューアルしたものなので、天井が高いんですね。だから大きな、迫力を持った展示ができるということで、最初はビジュアルで海を体の中に取り込んだということをバンッと伝えて、次に、塩と言っても世界には、岩塩、湖塩、天日塩など、いろいろな種類があるんだっていうことをお伝えするために、天井高とかスペースの大きさを活かして実物をなるべく見てもらうっていう展示をしています。

一方たばこの展示では、マヤ文明の代表的な遺跡のひとつ「パレンケ遺跡」の、たばこに関する最古の資料といわれている「たばこを吸う神」のレリーフがあります。

渋谷時代にこのレリーフのレプリカだけは展示していたんです。

移転でスペースが大きくなったので、神殿内陣部分全体を復元することで、迫力をもって、全体を見ていただくことで雰囲気も知っていただき、展示にダイナミックさを出すことで、まず起源であるたばこについて皆さんに知っていただくというような展示の工夫をしています。

常設展や資料室などに行きにくい動線になっている気がしたのですが?


広報:元々倉庫だった建物のリニューアルという制約がある中でつくったので、柱や構造壁など、絶対に変更できない部分との兼ね合いが難しかったです。

質問4:続けていくにあたって苦労されていること、お困りごとがもしあれば教えてください


館長:維持費の捻出という意味では恵まれていると思います。地方公共団体がやっている博物館のように予算制度や議会を通さないと何もできないとかそういうこともないですし、個人がやっているような入場料で運営しているということでもなく、財団と言う形で私共は運営委託費をJTからいただいて、その中からやっているんです。

何か別の団体が委託されて運営しているということですか?


館長:ここは財団法人化されていまして、私共としてはJTからこの博物館の運営を委託を受けて運営しているという形なんです。施設の持ち物、収蔵品も含めてJTの持ち物。

私共の組織は「公益財団法人 たばこ総合研究センター」っていうんですけれど、そういうのって企業系博物館には多いんじゃないですかね。

企業の持ち物なんだけれども運営は財団、という形です。

広報:ただ、同じ企業系博物館にしても、自社製品の魅力を伝えるというところもあるのですが、当館などはそういう面からではなく、設置企業(もとは専売公社)が扱う製品の歴史と文化を伝える展示をしています。

ではお困りごとは特にはないですか?


館長:常設展にはどこでもそうなんでしょうけれども、一回か二回来れば大体こんな感じかってなるでしょうし、色んな特別展を当館ではだいたい年5回やっていますけれども、そういうものをうまく織り込んでいかないと、だんだん集客力がなくなっていくというところはありますよね。

それともう一つは、全く関係がない特別展をやってもしょうがないので、あくまでもたばことか塩に少しでも関係がある、そういうものとの関連性をもたす中で収蔵品だとか、関連する他の美術館なり博物館にものをお借りして特別に展示させていただくとか、そういう知恵を出していかないと、そういう特別展や企画展もなかなかできないというところは、まあ、困っているというよりは知恵の出しどころなんですよね。

だからかえってユニークなものができるのかもしれないですね。

広報:当館は常設展も見ていただくと結構知らなかったことがたくさんあったということで、ご満足いただけるケースが多いんですけれども、やっぱりリピーターの方達は特別展を目的にいらっしゃる方が多いですし、それを楽しみに当館の情報を得て下さっているという方もいらっしゃるので、館長が申した通り、いかにお客様に来ていただくものが限られた予算の中でできるかというところで、学芸員をはじめ知恵をしぼってやっております。

質問5:その他、ご来場の方々に何かお伝えしたいことはありますか


館長:存立のミッションである、やっぱりたばこなり塩っていうのは、特にたばこは嗜好品ですけれども、決して世の中から排除されるべきものではないですし、脈々とした歴史もあるし、ポスターだとか印刷技術だとか色んなところに日本の中で貢献してきた産業だし、歴史なり文化があるんだなっていうことを知っていただければ非常にありがたいし、塩に関しても別に海から作るものだけじゃないよと。塩に対するものの見方なり広がっていただければそれで非常にありがたいことだと思っています。


  • フリースペース。奥にはたばこと塩の事業のあゆみの年表

  • 多言語化に対応

  • イヤホンガイドも多言語が充実

  • 基本、撮影OKなのが嬉しい

  • 高さ大きさに圧巻の展示品の数々
  • 高性能な喫煙ルーム

見学した際の感想:

受付の方も含め、今回インタビューでお会いした方々の御対応がとても丁寧で、仕事や館を誇りに思っている様子が印象的でした。

館内に豪華で高性能な喫煙ルームがあり、私のような禁煙者が最新の喫煙ルームを体験できる場所って実はここしかないのでは?面白い!と感じ、もっと”普段は禁煙者”向けのちょこっと体験コーナーを増やしてほしいと思いました。

例えば私はきせると水たばこを一度は吸ってみたいので、この博物館で安全にちょっとだけ体験出来たらいいなと思ったのですが、そういうのは喫煙を助長することにつながる可能性もあるため簡単にイベント開催はできないという事情があることがわかりました。

常設展と同じくらい、じっくり見ると奥深くて面白かったのが、公式ホームページ。

例えば渋谷時代の館内がぐるぐる自由に見られるコーナー(→ 渋谷・神南博物館メモリアル ぐるり360°)が面白い!
エレベーター内の張り紙まで詳細に見られ、もう閉館した館だとは思えないくらいリアルな保存。
この形式はFLASHなので普及は難しいですが、アイデアとして、閉園する遊園地や閉館する記念館など、全国統一で似たような形式で保存していけないかと思うくらいでした。

そして古い企画展の解説の充実ぶりも凄い。過去の学芸員さんやウェブ制作者さん達の情熱を感じられます。

今後、ホームページはリニューアルを予定しているそうですが、実際に博物館に行くと1階には渋谷時代の館内模型や年表があり、当時の詳細を辿ることができます。

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